子供の頃には僕も友達と秘密基地をつくったりしていました。
裏山にダンボールを運び込んだりして。
「秘密基地」というのはその言葉のもつ性質通り、大人には見つからない場所につくるので、大人になった僕は通常そこに行くことはありません。
でも、そういえばあの場所は今どうなっているのかな、とふと思ったりすることもあります。
少年時友とつくりし秘密基地ふと訪ぬれば友が住みおり
笹公人『念力家族』より
この短歌ではそんな思いに駆られた作者が秘密基地のあったところにいってみたら、なんと、そこには一緒に基地をつくっていた友達が住んでいたというのです。
現実には、まぁ、そんなことは無いでしょう。
爆笑問題の田中さんのツッコミが聞こえてきそうです。
妄想、もしくは寝ているときに見る夢の中の出来事のようでもあります。
短歌というと、どうしても堅苦しいイメージがあると思いますが、現代短歌ではこういったコミカルな歌も多くあります。
この歌の場合はただコミカルなだけではありませんね。
もしかしたら、作者は毎日の生活や仕事に心をすり減らしていて、大人になることに憧れを持っていた少年時を懐かしみ秘密基地のあった場所を訪れてみたのかもしれません。
そこで見た友はパラレルワールドの自分なのかもしれませんね。
もちろん他にもいろいろな読み方が出来るでしょう。
歌集『念力家族』からの一首(短歌は一句ではなく一首と数えます)です。
この歌集はNHKでドラマ化され小説化もされているという異色なエピソードを持っています。
確かに一首一首が短編ドラマのようでもあります。
そしてこの歌集の著者の笹公人さんこそ、僕が師事している先生であります。
次回以降も短歌のあれこれをお伝えできたらと思っています。