世界中のいたるところに下町はあります。
そして、その下町と呼ばれる場所では、どこも共通する独特なノスタルジックな時間がながれています。
僕の長年の友人のSさん。
友人と言ってもSさんは僕よりも6つ年上の男性、フリーのデザイナーでありロマンチストでもある。
Sさんのクリエイティブの源泉はパリの下町だそうで、僕も2度ほど案内してもらったことがあります。
泊まったのはサンマルタン運河沿いの下町にあるホテルでSさんの常宿。
古びたホテルで、冷暖もついていないので、夏場だったこともあり窓は全開です。
その大きな窓の外側には通りに面した小さなバルコニーがついています。
夜になり、ワインを片手にそのバルコニーへ腰かけると、そう広くない表通りを挟んで向かいにも、同じくらいの高さ(確か5階くらい)のアパートが見えます。
同じようにアルコール片手に、バルコニーに身を乗り出している下町のパリジャンとパリジェンヌ達。
まっすぐ前を見ると目と目が合うほどの距離感。
ボンソワール。
通りを歩く人たちが見上げて何か言葉をかけています。
同じフロアーの男女が楽しそうに会話をしていたりします。
まるで古いフランス映画のシーンそのまま。
少し遅れて隣の部屋のバルコニーへ顔を出したSさん、そんな風景を見て一言、
「みんな愛について語り合ってるいるんだろうね。」と
多分、いや絶対違うと思います。
きっと「晩飯食べた?」とか「今日会社でさー」とかといった会話のはず。 知らないけど。
でも、もしそうであってもおかしくないと思わせるほどのラブアンドピースな空気が流れている、それが下町マジックです。
そのあとSさんからさらなる下町マジック秘話を聞くことになる。
その話は最後に取っておくことにして、場所は変わって東京の下町。
そんな下町マジックな場所が東京にもあります。
#9 蔵前 yohaku(ヨハク) 「ブラヤモリ」
東京の下町「蔵前」に「yohaku」というショップがあります。
浅草のお隣の蔵前、隅田川を渡ってすぐです。
そういえば観光汽船の浮かぶ隅田川はまるでパリの中心を流れるセーヌ川のよう。
あいにくの雨もよう、霧たち込めるその様子はまるで「霧の都パリ」。
霧の向こうに見えるあれはもしかしてエッフェル塔では、
とその時、隣から
「社長、スッ、スカイツリーですよ。スカイツリーが見えますよっ。」
とオーモこと営業の大森。
はい、そうです。
あれはスカイツリーです。
「すごいですね、テレビで見るのと同じですね。」と初めて見るスカイツリーに興奮気味のオーモ。
yohaku(ヨハク)鳥越店
なにはともあれ隅田川をこえて地下鉄蔵前駅を通りすぎ、鳥越神社の手前にyohakuさんはあります。
下町ならではの風情のあるお店が並んでいるのを楽しめるその道のりを、立ち寄りたい気持ちを抑えながら進みました。
yohakuさんはカットソーを得意とするアパレルメーカー。rolcaショップでもyohakuさんの洋服の取り扱いをさせていただいています。
そして、yohakuさんでもrolcaの洋服の取り扱いをしていただいている、お友達メーカーです。
yohakuの越川さん(右)とrolcaのオーモ(左)。
越川さんは、下町に差し込む穏やかな木漏れ日をそよ風にのせておくり続ける下町マジックな女性です。
yohakuさんのオリジナルはもちろんのこと、その日はちょうど宮田織物さんのはんてんの販売イベントをしていました。
これまた、下町テイスト満載ですね。
調子にのって試着しちゃいました。
こんな、下町っぽいものも展示しています。
由来を聞いたんですけどね。
すみません。忘れちゃいました。
なぜか古本も販売しています。 これは社長さんの趣味ですね。 きっと。
下町マジック秘話
ところは変わってもう一度パリの下町へ。
何年か前に同じようにそのホテルに泊まったSさん。
朝出かけようとすると、フロント前のソファーに鮎川誠さんとシーナさん夫妻が座っていたそう。
あまりの感動に思わず声をかけてしまったそうです。
「嬉しいです。僕パリに来たらいつもこのホテルなんですけど、もしかして鮎川さんもそうですか?」
鮎川さんは飲みかけのカプチーノのカップをゆっくりとテーブルに置き、サングラス越しの目線を少し上にあげてゆっくりと答えたそうです。
「パリは 下町が 最高だ」
なにそれ。完璧すぎるシチュエーション。
これぞ下町マジックでは。
そして、今日も世界中の下町と呼ばれる場所ではそんなマジックが繰り広げられているはずなのです。